国土交通省は4月、i-Construction2・0を発表した。現場作業の効率化に主眼を置いた従来の取り組みをステップアップさせ、〝現場のオートメーション化〟による省人化の方向性を強く打ち出したのが特徴だ。人口減少下でも社会・経済活動に不可欠な建設サービスを提供するため、2040年度までに23年度比で少なくとも建設現場の3割の省人化を図り、1・5倍の生産性向上を目指す。𠮷岡幹夫国交省技監に今後の方向性を聞いた。
4月から時間外労働の上限規制が建設業にも本格的に適用されました。きちんと休みをとりながら仕事ができる工期を確保するとともに、適切な給与の確保をバランスさせることが非常に重要です。
3月に岸田文雄首相と建設業団体の賃上げに関する意見交換会が行われ、技能者の賃上げは5%を十分に上回る上昇を目標に設定しました。政府として建設業界の賃上げを推進する観点から、24年度の公共工事設計労務単価を5・9%引き上げましたが、この目標に基づき、処遇改善に向けた取り組みを今後も継続することが重要だと思います。
働き方改革の観点では、国交省は直轄土木工事で工期全体での週休2日の取り組みを進めてきましたが、月単位の週休2日工事に取り組んでいきます。猛暑といった寒暖の差などを考慮した適正工期の取り組みを進めており、休日一斉閉所も各整備局で行っています。民間工事や地方自治体の工事にも波及させたいと思います。
本年はDXによる変革を幅広く普及する〝展開の年〟に位置づけています。特に建設業界のイメージを変えるため、給与がよく、休暇がとれ、希望が持てる新3Kに「かっこいい」を加えた「新4K」を目指したいと思います。
この方針の実現に向け、国交省は16年度からi-Constructionを中核とするインフラ分野のDXを進めてきました。今後さらに取り組みのステージを上げるため、i-Construction2・0を打ち出し、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」を三本柱に、少ない人数が安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場を目指してオートメーション化を進めます。
施工のオートメーション化は、i-Constructionの中心となるICT施工を拡大するもので、抜本的な省人化を図るため、オペレーターが複数の建機の動作を管理する施工のオートメーション化を推進します。
異なるメーカーの建機を制御可能にする共通制御信号の策定や遠隔操作の技術開発を促進するほか、今年度は自動施工の安全ルールを実現場に適用する試行工事、施工データの活用による作業待ちの防止や工程調整、最適な要員配置の効果を検証する試行工事を実施する予定です。施工データを集約し、活用する施工データプラットフォームの構築にも取り組みます。
データ連携のオートメーション化では、調査・測量、設計、施工、維持管理の建設生産プロセス全体をデジタル化し、データを横串に通すBIM/CIMを推進します。プロセス間でデータを引き継ぐことで、その都度データを手入力する手間などをなくします。設計データを施工データとして直接活用する取り組みや、デジタルツインの構築による施工計画の効率化を進めるほか、BIツールの活用でペーパーレス化によるバックオフィスの効率化も目指します。今年度は、3次元モデルや設計支援ソフトで産出する数量を直接積算に活用するためのツールを開発し、業務で試行する予定です。また設計データをICT建機や工場製作で活用する取り組みを進めたいと思います。
施工管理のオートメーション化は、リモートでどのように施工管理するかがテーマです。既に遠隔臨場を検査に適用するとともに、コンクリート構造物の配筋の出来形確認でも画像解析による計測技術を適用します。加えて、大容量のデータを活用するには通信回線の強化も不可欠であり、革新的な技術を積極的に投入し、生産性向上を加速化したいと思います。
40年度までの建設現場の3割の省人化、1・5倍の生産性向上は必ずやり遂げなければならない数字であり、われわれならできると思います。
建機や情報通信分野の技術開発のスピードが速く、キャッチアップしていくのが難しい時代です。さらに現場のオートメーション化を進めるには、建機だけでなく、さまざまな技術を集約し、コラボレーションしながら技術開発する必要があります。大手企業だけでなく、スタートアップなど建設業以外の分野のさまざまな企業の参加が不可欠だと思います。
CSPI-EXPOは建機や測量器機、AIやセンサーシステムなど幅広い分野、業界から製品や技術が出展されます。異業種からもインフラ分野のさまざまな課題解決につながるソリューションが提案されており、コラボレーションが生まれる場として大きな意義があります。インターネットの画面や資料を通して見るより、百聞は一見にしかずというように、直接見て体験し、新たなアイデアや交流が生まれることで、建設業だけでなくインフラ分野にかかわる幅広い人に有益になると思います。この展示会を通じ、i-Construction2・0の発展を含めた技術革新が促進することを期待しています。
2024年能登半島地震の対応を通じ、やはり建設業は社会になくてはならない産業であり、そこで働く方はエッセンシャルワーカーだと実感しました。一方で、人口減少や人手不足は全産業に共通することです。これを乗り越え、サステナブルなインフラ整備・メンテナンスを提供し、国民生活や経済を守り続けなければならないと思います。そのためにも働き方を変え、新4Kを目指さなければなりません。
希望が持てるという意味では、i-Construction2・0を進め、若い人が携わってみたいと思える業界にしていくことが重要です。そういう願いも込め、国交省は22年4月に第5期国土交通省技術基本計画を策定し、20-30年先の社会イメージを示しました。将来像を示し、そこから逆算してものを見るバックキャスティング的な思考で取り組みを進めることが重要です。若者が一つでも多くの夢を持てる産業していきたいと思います。
ダムなどの大規模現場では、既に重機の遠隔操作などの最先端の技術が積極的に使われています。こうした取り組みを継続しつつも小規模現場の生産性を底上げし、横展開することが重要です。どのような課題があるか共有し、生産性向上に取り組む仲間を増やしていきたいと思います。