国土交通省大臣官房技術審議官
東川直正 氏


中小建設業のICT利用環境を整備
インフラDXの裾野を拡大

国土交通省は2021年度、中小建設業のICT利用環境を整備するため、i-Constructionをさらに促進する。アフターコロナや働き方改革に対応した現場を実現するうえで、デジタル技術など新技術の必要性がますます高まる中、建設現場を変革する「インフラ分野のDX」を推進することが急がれている。国土交通省の東川直正技術審議官に、建設業の将来を展望してもらった。








認定制度でICT建機を導入支援

--21年度に取り組むi-Constructionのポイントを教えてください

 国土交通省がi-Constructionを開始してから5年が経ち、直轄工事で公告するICT施工の8割が実施されるようになりました。今回3回目を迎える建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO)も過去最大の出展者数になると聞いており、i-Constructionが着実に普及してきたと実感しています。

 一方、課題となるのが、中小建設への普及拡大です。小規模な事業者にとってはコストや人材などの面で導入が難しい側面があるため、中小企業が安心して新技術の活用に飛び込めるよう、i-Constructionの中でICTを活用しやすい環境整備に力を入れたいと思います。

 具体的には、小規模現場にi-Constructionを普及させるため、ICT建機に加え既存の建機に後付けパーツを取り付けてICT施工を行う技術や、小型ICT建機を対象にした認定制度を創設したいと考えています。21年度に事業スキームを構築し、22年度以降の運用開始を目指します。国交省が認定したICT建機にはi-Constructionマークを表示できるようにします。

 また作業員の負荷軽減や作業効率を向上させるため、アシストスーツの試験施工も小規模を含む全国20現場において活用効果の検証をします。

 新たな工法や材料を活用して現場の効率化・省人化を図るため、プレキャスト(PCa)コンクリートの導入も積極的に進めます。特殊車両で運搬できる規格についてはPCa工法の原則採用に舵を切るとともに、現場打ちとPCaをコストで比較すると現場打ちが優位になるため、安全性や工期などの要素も考慮した比較設計方法の試行も開始します。PCaコンクリートの品質確認効率化に向けてJIS規格改定の検討も進めます。



最新技術の導入で現場に活気

--中小企業の利用環境の支援としてどのようなことを考えていますか

 直轄ではICT施工の8割が実施されるようになったとはいえ、Cランク企業のうち約5割はまだICT土工を経験していません。地域の大手クラスの企業は経験する機会が増えていても、都道府県など自治体発注工事を主体する企業はまだまだこれからの状況です。

これからICT施工を始める中小企業に対して、ICT施工を導入しやすくするため、地域の中でICT施工の指導者を育成し、希望する企業にアドバイスする制度を開始したいと考えています。

 また、これまでICT施工の発注者指定工事は3億円以上の大規模工事に限られていましたが、今年度から6000万円以上に拡大します。対象工事を増やし、地域建設業がICT施工を経験する機会を増やすことで、生産性向上の効果を知ってもらえるようにしたいと思います。

 実際、地方の現場を視察に行くと、女性や新採用社員がいきいきと働く場面に出会うことがあります。ICTを活用して生産性を向上させることが、産業そのものに活気をもたらすことに貢献しているのです。自治体にも積極的に工事に採用してほしいと考えています。



アジア諸国にi-Construction拡大

--他にもi-Constructionにはどのような可能性がありますか

 東南アジアを中心にICT施工を海外展開するため、民間企業を主体とするi-Construction海外展開推進検討会を支援しています。タイでは建機メーカーによるICT施工のデモンストレーションやセミナーが高く評価され、実際の現場でICT施工を実施することになりました。両国が参加する協議会も設立され、具体的な検討を進めています。

 フィリピンでも建機メーカーや建設企業が現地の技術者の教育や研修を予定するなどアジアの国々にi-Constructionが広がろうとしています。国際協力機構(JICA)と連携してアジア諸国の生産性向上を支援するとともに、国際標準化に向けた活動も展開したいと思います。



技術者が直接実機に触れる機会に

--i-Constructionの根幹となる新技術の普及に向けてCSPI-EXPOに期待することは

 新技術を自社に適した形で導入するには、最新の技術やサービスを直接見ることが有効です。CSPI-EXPOは建設業界と測量業界に特化した最先端のさまざまな機器を展示するため、新たな発見が生まれる場所として大きな期待をしています。  私も若い頃は展示会をよく見学しました。出展ブースを回ると、当時は新しかった海外のソーラーパネルに触れることができ大きな刺激を受けました。出展社と訪問者がその場で商談できるのも展示会の魅力の一つでしょう。

 建設現場の課題を改善するには、さまざまな分野の技術を上手につなげる必要があります。それには現場で働く技術者が直接会場に訪れ、実機に触れることが大切になるでしょう。さまざまな技術やサービスを体験することで、自分の現場の改善策と新技術を結びつけるイマジネーションが重要です。

 近年は、異業種から新規参入した建設業向けのソリューションが増え、バックオフィスを含めたさまざまな分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、i-Constructionが広がりを見せています。そうした新たな技術・サービスと建設現場がマッチングする場として機能することも期待しています。



現場が自律的に施工される未来

--建設技術が急速に進化する中、どのような現場の未来を展望しますか

 日本全体で人口減少が進むなか、労働集約型の建設産業が一気にICT化するのは難しいかもしれません。しかし、災害時に地域の復旧・復興を担う建設業は存続する必要があり、少ない人数で今まで以上の成果をあげることが求められます。そして継続的に若者に入職してもらうには、給料を上昇し、週休2日を確保する働き方改革が不可欠になっています。

 それを実現するには、地域建設業がいままで以上にICT化する必要があります。建機の遠隔操作をはじめとした効率よく働くための技術の進化が必要です。それには大容量データを送受信する5Gなど通信技術の進歩も不可欠でしょう。ゆくゆくは遠隔操作に対応した複数の建機の運転席を一個所に集約し、オペレーターがモニターに映された現地の映像を見ながらそれらを操作して現場を進められるようになると思います。  また、大手企業が手掛けるダムやトンネルなど大規模現場では、規模のメリットを生かし、無人化されたさまざまな建機が連携して稼働することで、人の手を介さずとも現場が自律的に施工されていく未来がくるかもしれません。

 デジタル化の巨大な波が建設業界に訪れているため、このチャンスに技術開発が進むことを期待したいと思います。当面は人の手に頼りつつ生産性向上を進めることになりますが、将来的には中小、大手ともに最新テクノロジーを駆使し、安全と品質を確保する新たな建設現場を実現したいと思います。それが魅力的な建設業界の発展につながると確信しています。



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