立命館大学理工学部環境都市工学科教授
i-Construction推進コンソーシアム 委員
建山和由 氏


現場を変えるポジティブな意識を
明確な目的で新技術を導入
品質と効率の双方が向上





中小企業の積極的な導入を目指す

--建設業界のICT化はどのような状況ですか

 国土交通省が主導するi-Constructionがスタートして5年になりました。3次元データを使い、調査、設計、施工、維持管理を通じた建設生産システムの合理化、省人化が進み、一定の成果が表れています。

 それとともに課題も見えています。ICTなど最新技術を導入できる企業は順調に成果をあげる一方で、地域に根付いた中小建設業には依然としてハードルが高く、興味があっても導入できないところが多いようです。「i-Constructionを始めよう」というかけ声だけではこれ以上広げるのは難しいため、中小建設業が積極的に導入する次のステージを目指す必要があると思います。



課題を解決するため、どう使うかを議論

--中小建設業が自らi-Constructionを推進するにはどのような意識が必要でしょうか

 新技術を取り入れるときは、目的をはっきりさせることが重要です。よく「新技術を導入しても効果が分からない」という声を聞きますが、ただ便利だからということだけで導入するとそうなりがちです。大事なことは、自らの課題を解決するために新技術をどう使うかを議論しておくことです。きちんと目標を設定すれば、達成度や効果を把握しながら進めることができます。仮に達成できないのであれば、改善するためにはどうすれば良いのかを考えるプロセスに入ることができます。

 また、新技術を導入する目的に人手不足の解消を設定することが多いようですが、それだけでは漠然としていて〝自分ごと〟にして問題を考えることが難しくなります。工期短縮の日数、人員削減率、就労時間の削減など具体的な目標を設定し、新技術でどう改善できるかアプローチしてほしいと思います。今までのやり方で達成できなかったことに対し、技術者自身が目標を設定することが大切です。



専任要件の緩和にICTが貢献

--具体的な課題と対策は

 公共工事が直面している課題として、不調不落の増加があります。2010年を底に建設投資は伸びており、コロナ禍の影響はあるにしても老朽化したインフラの維持管理や民間プロジェクトを含めると、今後も工事量は増加すると予想されます。  一方で、人口減少などを背景に会社や技術者、職人が減っていきます。地域建設業の経営者が「取りたい工事があっても技術者数に限りがあり手を出せない」と言うように、監理技術者が不足すると採算の合う工事を優先して受注する必要があり、手間が多くて人気のない工事は不調不落に陥りがちな状況です。

 国土交通省などでは監理技術者の専任要件の緩和に動き出していますが、今後、リタイアする技術者が増える一方で新規入職者が減少している状況を考えると、より抜本的な改革が必要と考えています。

 これまで、監理技術者が現場を掛け持ちすることは、拘束時間や業務量を考えると物理的に難しいと考えられてきましたが、この数年で遠隔臨場や3次元データを活用した出来形管理など新技術を活用した合理化が急速に進み、監理業務の迅速化や質的向上が実現しています。

 ICTの進歩により新たな技術がどんどん出てきているため、それらのツールを実装し一定の条件を整えた場合は、監理技術者の専任要件を緩和すると、企業は仕事を多く取れるようになり、不調不落の減少につながります。企業が新技術を導入するモチベーションにもつながります。



より合理的なインフラ管理の仕組みが不可欠

--発注者はどのような課題がありますか

 地方自治体、特に市町村の土木部門の職員数はどんどん減少しています。国交省の白書によると、05年に約10万5000人いた職員は18年に9万1000人を切り、約15%減少しました。一方で、高度経済成長期に一斉に整備した膨大なインフラ構造物が更新期に入り、現有の職員数では回しきれない市町村が増え、より合理的に管理する仕組みが求められています。

 そうした中、インフラ管理や建設現場を画期的に改善する可能性のあるICTを利用しない手はありません。品質と効率の両方を実現できるため、建設業界の改革を進めるチャンスといえます。

 それには導入する目的を明確にした上でツールを決める必要があるでしょう。最近はびっくりするような新技術も開発されています。そうした技術をどう使えば自分たちの現場に役立つかを考えることが大切です。

 建設業界の経営者や技術者が自ら導入事例を発信するケースも増えています。仕事の方法を変えるきっかけになるため、新技術をポジティブに活用する上で業界内の情報共有も有効になるでしょう。



建設生産システムは新旧のせめぎ合い

--i-Constructionの海外展開も議論されていますが、どのような可能性がありますか

 建機と測器メーカーやゼネコンを中心にした民間委員会が東南アジアを対象にi-Constructionの海外展開を議論しています。

 私は海外での学生の起業やビジネスを支援するイノベーション人材プログラムも支援しています。その際、「事前にアイデアや計画を考えることは大切だが、日本での当たり前が現地では成り立たないことも多い」と助言します。極端な例で言えばスマートフォンは自由自在に扱うのに裸足で生活している人もいます。学校教育で3次元CADを習得している国も多くあります。

 文化や習慣を知らずにただ日本のやり方を移植するだけではうまくいきません。その地域が発展するには、どのような技術が役立つかを考えることが重要になるのです。日本企業が自社に新技術を導入するときも同じです。

 一方、日本は長い歴史の中でインフラ整備の体系が完成しており、そこに記載されたマニュアルに沿って事業が進みます。誰もが運用できる仕組みがつくり込まれているが故に、逆に新しい技術を導入しにくくなっています。ICTが急速に進化、普及したことで、日本の建設現場は旧いシステムと新しい技術のせめぎ合いの状況といえるでしょう。

 一度ルール化したものを変更するのは大変な努力が伴うため、特に地域に根付いて活動するローカルエンジニアにとっては、これまで築いてきた自分たちの技術や仕事の進め方を変更するのに大きな抵抗があると思います。新技術を受け入れやすい海外とは対照的な状況といえます。



新技術を見て、触れる機会に

--第3回建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO)にはどのような期待をしていますか

 これからは新技術をどんどん取り入れて、建設現場を変革する時代になります。そのとき受け身になるのではなく、ポジティブに現場や企業を変えていく意識が大切になります。そのためには、どのような技術が世の中にあるのかを知ることが重要になります。

 そして自分の目で見て、触れてみることが大切になります。そうしなければ現場で何が使いやすくて、使いにくいかを検討することができません。実際に使った結果、より必要な機能をユーザーが提案することも大切です。ユーザーとメーカーが互いにかかわり、正のスパイラルを描くことで、本当に現場で使える技術に発展させることができます。

 第3回CSPI-EXPOは日本最大級の建設・測量業界の専門展示会であり、最新の技術やサービスが集まります。そこでユーザーが実際に製品を見て、意見交換しながら、現場の使い方を議論する場になることを期待しています。



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