【2020年12月号】小宮山会長インタビュー

最先端技術で持続可能な社会構築​
産学官が連携 技術開発を推進​
新技術をつなぐ取り組みを発展
i-Construction推進コンソーシアム会長
三菱総合研究所理事長
小宮山 宏 氏

生産性100倍を目標に

 

--建設業界のICT活用はどのような状況ですか

 建設業は、ピラミッドを建設していた時代から典型的な労働集約型の産業です。時代が下るにつれて機械化が進み、いまはICTやAIを活用する時代に入りました。一方、日本の技能労働者は約300万人となり、今後さらに減少することが予想されます。政府はi-Constructionによる生産性20%向上を打ち出しましたが、私は100倍を目指さなくてはならないと思っています。

 ピラミッドであれば、現在の技術を使えば当時の100倍以上の生産性で建設できるでしょう。機械とICT、現場をうまくつなぐシステムをつくることで、それぐらい大きな目標を実現する可能性があります。

 もう1つ、高度経済成長期と今の建設業で異なるのは、古くなったら解体するスクラップアンドビルドから、建物の設計、建設だけでなく、解体、リサイクルまでを考える循環型ものづくりの時代になったということです。

 象徴的な出来事の1つに製鉄会社が電炉への投資を加速していることがあります。これまでのように鉄鉱石から鉄をつくるのでなく、今ある人工物をスクラップして再利用する時代に入ったのです。世界の潮流でもあり、建設業も建物のリサイクルまで一気通貫したものづくりを行わなければなりません。

先端技術でブロックチェーン構築

 

--循環型ものづくりに必要なことは

 建設業にもブロックチェーンの考え方が必要になると思います。何をどう施工したかを記録し、リサイクルに至るまで履歴を残すことが求められます。大学に勤務していたころ、建物から薬剤が漏れ出たことがあり、何号升から漏れたかをたどることができませんでした。古い建物のため、升の位置や経路を記した設計図が保存されていなかったのです。

 こうしたことが起きないよう図面などの履歴を残すことが重要です。その上でBIMは有効であり、ICTやAIを活用したシステムも構築する必要があります。

 これからの建設業は、ただつくるだけではなく、最先端の技術を動員し、地球や社会の未来も見据えた持続的なものづくりをしなければなりません。それがi-Constructionのビジョンでもあります。

仕事のスタイルを変える


--実現するにはどのようなことが必要ですか

 東京大学に寄付講座「i-Constructionシステム学」ができました。東大の土木系と情報系の研究者、企業の研究者のほか、国土交通省の技官も参加しているのが特徴です。そこに学生が加わります。産官学の連携に若者が入る理想的な形ができたと言えるでしょう。学者が語るだけでは技術は普及しません。実際に技術を使う企業と、基準や規制の権限を持つ国土交通省が加わることで普及しやすくなるのです。そこに若い人が入ると、持続性がうまれますし、私たちが思いもしなかったようなことを考えついてくれるでしょう。

 新技術の重要なことは、実際に使われることです。現場に新技術を使うシステムや体制がないと、余計な費用が上乗せされるだけで、せっかくの効果を発揮できません。いままでの仕事のスタイルを変える必要があるのです。

 世界初のロボットホテルとして注目されている「変なホテル」は、ホテルの設計や業務オペレーションをロボットが行う仕組みに最適化しているから仕事が回ります。ロボットホテルを広めるため、現在は同じスタッフがベンチャー企業をつくり、ロボット導入のコンサルティングに力を入れているそうです。同じことを建設業界もやらないといけません。

 何もないところに新技術を導入するのは簡単です。アフリカでは電話線のない地域にスマートフォンが一気に広まりました。建設現場のように既存の仕組みがあるところに新しい技術を導入するのが難しいのです。問題は、その役割を誰が担うかです。ゼネコンが使うと言えば話は早いですが、そうでなければ産官学の研究者や学生が一緒に取り組むことが大切です。

 グーグルの創業者が学生時代に事業を立ち上げたように、新技術をつなぐ役割をビジネスとして発展させる若い人が現れてほしいと思います。寄付講座にはそのような人材育成も期待しています。i-Construction推進コンソーシアムも企業のコンサルティングに力を入れるべきと思います。

他省庁、他産業との連携が推進のかぎ


--具体的な事例があれば教えてください

 私が森林の再生事業に関わる福島県の会津地方は、18年に13市町村と商工会議所が連携し、「会津森林活用機構株式会社」を設立しました。林野庁、環境省とも連携し、新しい林業を育成しています。法務省は一見かかわりがないように見えますが、日本の林業を再生させる上で山林の土地所有権と伐採権を分離する必要がありました。外国人による山林の買い占めの問題もあり、関係しているのです。

 同機構は林業のビジネスを活性化するために株式会社の形態をとり、事務局はベンチャー企業が務めています。ゼネコンや商社の関心も少しずつ高まっているほか、岩手県や山形県でも同様の組織を立ち上げ中で、ムーブメントになりつつあります。

 i-Constructionシステム学にも他省庁や他産業の人が参加してほしいと思います。互いのことが分かれば事業は進みやすくなります。新技術も施工だけでなく、例えばトイレでもいいと思います。業務環境は仕事をする上で非常に大切です。無水トイレなど新しい技術が開発されており、最先端のものを建設現場にも導入すべきです。新型コロナウイルス対応もあり、議論の余地はないでしょう。

まちづくり産業への発展を期待


--今後、建設業はどのように変わる必要がありますか

将来的に建設業がまちづくり産業に発展することを期待しています。建築家の安藤忠雄さんも「住吉の長屋」のように最初は住宅設計から始めましたが、最終的にはランドスケープを含めた地域全体をプロデュースする仕事を手掛けるようになりました。

 建設業もディベロッパーや社会工学と連携を深め、より良い未来を創造する産業になってほしいと思います。循環型まちづくりという、より大きな枠組みで事業を手掛けるためにも、まちづくり産業への発展を期待しています。

 

PAGE TOP