会期

2023年5月24日(水)・25日(木)・26日(金)
10:00〜17:00(最終日26日のみ16:00まで)

会場

幕張メッセ

誇り持てるインフラを後世に

協調領域の検討着手 次世代の人材育成

東京大学 大学院
特任教授

小澤 一雅 氏

 2018年10月に設置された「東京大学大学院i-Constructionシステム学寄付講座」の活動が活況を呈している。同講座を主宰する小澤一雅東大大学院特任教授にi-Construction推進の現状や講座の動向などを聞いた。

「東京大学大学院i-Constructionシステム学寄付講座」の最新動向は

 現在、データやデジタル技術をうまく活用して、新しい仕事の仕方、生産性向上に繋がる施工の仕方を実現するためのより良いサービスやアプリケーションを開発促進する方策を探っているところです。データを使って少ない人手で現場を動かしやすくする、上手に管理していくシステムを誰でも使えるようにするために、データ・システム連携基盤の社会実装をめざしています。

 ことしに入り、寄付講座内に協調領域検討会を設置し、3月30日に設立記念シンポジウムをウェビナー開催しました。第I期でその一部を開発し、ユースケースを示してきたデータ・システム連携基盤(調査・計画、設計、施工、管理・運営段階で必要なデータを抽出し、利活用できるようにするプラットフォーム)の社会実装に向け、その検討に着手します。検討会の設置期間は第期が終わる2024年9月までで、i-Construction推進のカギとなる協調領域の開発整備、運営管理などをどのように進めるべきかを議論し、その立ち上げを準備するのが目的です。データ・システム連携基盤の整備により、デバイスやアプリケーションの開発を容易にするオープンプラットフォームとしての機能を提供し、協調領域と競争領域を明確化することで、各企業の競争領域への投資を促進し、建設生産システムの高度化を後押ししていきます。データ・システム連携基盤を協調領域として社会実装するためには、基盤の技術的課題を検討すると同時に、その運営体制の在り方や運営組織が持続的に経営可能な制度・仕組みなど多様な視点から検討を行う必要があります。

 インフラ事業関係者が誰でも利用可能なシステムを開発整備し、長期的に安心して運用管理可能な仕組みとすることが大変重要です。このシステムを実現することにより、インフラ産業全体の生産性向上と関連するICT産業への投資が期待できます。

設立記念シンポジウムの成果は

 シンポジウムでは、国土交通省の岩見吉輝氏から「建設機械施工の自動化・自律化を進めるための国土交通省の取り組み」と題する基調講演を頂きました。続いて、検討会の設立経緯と趣旨を説明し、設計段階、施工段階、維持管理段階の3つのワーキンググループに分かれて検討することなどを報告しました。

 設計ワーキングは、事務局を建設コンサルタンツ協会に置き、設計段階のデータ活用の実態に基づき、ユーザーが利用しやすいアプリケーションの開発が促進されるようデータ・システム連携基盤を設計し、その実用化に向けて検討を進める予定です。施工ワーキングは、事務局を日本建設業連合会に置き、躯体出来形管理や品質管理などの施工管理を合理化するアプリケーションの開発やブロックチェーンを基盤とする工事情報共有システムを用いた検査や支払いの合理化などを推進できるようデータ・システム連携基盤の構築を検討します。維持管理ワーキングは施設管理者である国土交通省が事務局をつとめ、道路管理や河川管理などのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できるようデータ・システム連携基盤の設計とその実装を検討します。

 協調領域の効果を理解するには、岩見氏が基調講演の中で紹介された建設機械施工の自動化・自律化における協調領域の枠組みを例に取るとわかり易いかと思います。各建設会社と建機メーカーが秘密保持契約(NDA)に基づく開発グループを構成し、自動化・自律化のシステム開発をしているのが現状です。A建設会社とA建機メーカーが組んで独自の自動化・自律化した建設機械を開発し、同様にB社はBメーカー、C社はCメーカーと組んで独自の建設機械を開発しています。建設会社と建機メーカーの異なる組み合わせでは、使えないことになります。

 そこで、協調領域として建設機械を動かす共通ルールを定めることで開発投資の重複を防ぎ、建設会社と建機メーカーの異なる組み合わせでも建設機械を動かすことが可能な環境を構築することが可能となります。それぞれの独自の競争領域は残しながらも、協調できる領域を探し出し、共通ルールを整備することで、研究開発の重複を防ぐと同時に、開発されたものを相互に活用しやすくなります。

 こうした考え方を建設会社と建機メーカーの関係だけでなく、設計、施工、維持管理のあらゆる段階のデータ取得のためのデバイス開発とユーザーのニーズに応えるアプリケーション開発の間で展開できないかと考えています。

 シンポジウムに参加した約350人の方々からはおおむね前向きなご理解をいただき、活動に期待するといった意見も寄せられましたが、一方で、実現は難しいのではないかといった声も含まれていました。

 建設生産システム高度化に役立つより良いサービス・アプリケーションの開発に向けて、ようやく一歩踏み出せました。引き続き関係団体の方々との連携を密にし、成果を出していきたいと思います。

生産性向上10倍を掲げていますが

 生産性を10倍にするためには、ちょっとした改善、改良では無理です。抜本的な改革が必要です。生産性向上のための施工方法の改革がテーマですが、施工方法だけで解決できる問題ではありません。施工性を考えた構造形式とか、施工性を考えた新しい材料の開発なども視野に入れる必要があります。費用、工程、品質を総合的に考慮するためのシミュレーション技術の開発も組み合わせて、生産性向上を実現する設計や施工のソリューション創出が必要となります。また、プレキャスト工場、機械(ロボット)、デバイスなどの開発や、さらに、新技術を活用するための制度、仕組みづくりも不可欠となります。

 その意味で、建設・測量生産性向上展(CSPI―EXPO)には建設生産システムのさまざまな分野における最先端の技術やサービスが集まるため、実機を直接見て、体験することで飛躍的な生産性向上に貢献するのはないでしょうか。

i-Constructionを担う人材育成への取り組みは

 寄付講座では、次の世代を支える人材の育成にも取り組んでいます。2019年春から実施している大学院生向けの講義用に『i―Constructionシステム学』という教科書を昨年出版すると同時に、演習も始めました。昨年開始した演習は、土工事を対象に、与えられたショベル・ダンプ・ベルトコンベヤーなどのモデル建機を組み合わせた施工計画を立案し、自身で作成したプログラムで自動化したショベルも活用して、模擬現場で実際に施工し、品質、工程、費用をチーム間で競争するものでした。参加した3チームは、独自の異なる施工計画を立案しており、それぞれの計画には随所に工夫の跡が見られました。ことしはショベルに加えて、ダンプトラックも自動化の対象とし、より高度な施工計画を立案できるよう、演習のバージョンアップの準備を進めています。

 技術者の創造力を高めるための人材育成の取り組みをさらに充実・拡大させて、誇りの持てるインフラを後世に遺すことにつながればと思っています。

\\ 『建設のミライ』がここに集結 //

特集インタビュー

誇り持てるインフラを後世に
協調領域の検討着手
次世代の人材育成

東京大学 大学院
特任教授
小澤 一雅 氏

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担い手確保、安全安心の実現
若者が活躍し、夢が広がる産業に

国土交通省
技監
吉岡 幹夫 氏

多様なデータ、デジタルツインで連携
目指すのはフルデジタルな社会
Society5・0実現へ
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デジタル庁
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現場に近い環境で
臨場感ある体験を実現

第4回 建設・測量生産性向上展
実行委員長
谷 鉄也 氏