第7回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2025) 出展資料請求 [無料] 会期 2025年 6月 18日(水)・ 19日(木)・ 20日(金)・ 21日(土) 会場 幕張メッセ

  • 会期 2025年6月18日(水)・19日(木)・20日(金)・21日(土)
    10:00〜17:00(最終日21日のみ16:00まで)
  • 会場 幕張メッセアクセス
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インフラDXで3つの変革
ICT施工ステージ2を推進

  • 国土交通省
  • 技監
  • 吉岡 幹夫

国土交通省は、2023年をインフラ分野のDXの〝躍進の年〟に位置づけ、ICTの全体活用による「ネクスト・ステージ」を目指すとともに、直轄事業におけるBIM/CIM原則適用を開始するなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)による変革を加速している。吉岡幹夫国土交通省技監に、インフラ分野のDXの今後の方向性と、目指すべき建設産業の未来を聞いた。

インフラDXのネクスト・ステージの方向性は

人口減少社会を迎えたことで、インフラ整備や維持管理、災害対応などで国民生活を支える建設業は、DXによる生産性向上や働き方改革が不可欠となっています。国交省は生産性向上を目指すi―Constructionを16年にスタートしましたが、現在はこれをさらに発展させ、社会全体で進むデジタル化に対応し、都市と暮らし、経済活動も支える「インフラ分野のDX」を展開しています。

22年3月に「インフラ分野のDXアクションプラン」を策定し、今年4月にはアクションプランの第2版に向けた骨子を示しました。分野網羅的・組織横断的に「インフラの作り方」「インフラの使い方」「データの活かし方」の3つの変革を強化していきます。

そのため、国交省は4月から新たにイノベーション担当の参事官を大臣官房に設置しました。土木、機械、情報通信の3分野を一元化し、部局横断的な連携を強化するのが目的です。インフラ分野が魅力ある産業として若い人に選ばれ、インフラから得られるデータを活用して社会経済活動や国民生活により一層貢献できるよう、チーム一丸となって取り組んでいきます。

ICT施工でも3つのステージを示しています

ICT施工は、直轄工事で導入を広げましたが、近年は自治体工事での導入も増えてきました。一方で、まだ未実施の企業もあるため、3つのステージに仕切り直して取り組みを加速したいと思います。

ステージ1は、土工や法面工など工種単位でICT化し、作業を効率化します。ステージ2は、工事全体でICT施工に取り組み、施工データを分析して工事全体の効率化を目指します。IoTやデジタルツインを活用し、リアルタイムの施工管理、リモート化による立会い、協議などの効率化を図ります。ステージ3では、現場全体(同一現場内の複数工事)の効率化を実現し、最適化された現場で施工を自動化・遠隔化します。ダムなど大規模現場で導入している事例もあります。

23年度は中小建設業への普及に向けたステージ1の取り組みを継続しつつ、段階的にステージ2に引き上げたいと思います。先駆的なプロジェクトではステージ3を展開する方針です。

4月からのBIM/CIM原則適用のポイントは

3次元モデルをつくることも大事ですが、どのように使うかがより重要です。特に測量、設計、施工、維持管理とデータをつなぐため、受発注者で情報共有するデータシェアリング(DS)の仕組みも新たに開始しました。未経験者も取り組めるよう、構造物の完成形状を3次元モデルで視覚化し、関係者で情報共有する「義務項目」と、より高度な活用を求める「推奨項目」に分けて整理しています。

デジタル技術は若年層が得意とするところであり、熟練者のノウハウや知見をデータに残し、若年層のデジタル技術と融合することで、建設業全体の発展に寄与することを期待しています。発注者も仕事の仕方を変えていき、効率化と生産性向上を進めていきたいと思います。

日本最大規模の建設専門展示会であるCSPI-EXPOに期待することは

建設機械や情報通信技術の発展や技術革新は、これまでとは比較できないほど加速しています。今回のCSPI-EXPOでは、建設機械や測量機器、各種ドローンをはじめ、AIツールやセンサーシステムといった幅広い分野、業界から出展があると聞いています。

本来は目的の製品を見るために一つ一つアクセスする必要があるのですが、CSPI-EXPOは最先端の技術やサービスが一堂に揃います。最新技術やサービスを直接見て体験する機会が提供され、業界内外の関係者の活発な交流が生まれるため、建設業界だけでなく、インフラ分野に関わる様々な方々に有益であると思います。

一度担当者に会えば、リモートで説明してもらう時も分かりやすくなります。そして、会場では技術や製品だけでなく、同じ目的を持つ仲間にも出会えるため、新しいシナジーが生まれます。その結果としてインフラDXが加速し、建設技術の一層の高度化、より広範囲の技術開発の促進につながることを期待しています。

日本の建設業界をどのように展望しますか

建設機械や情報通信など建設業界を取り巻く技術は、日進月歩で進化しています。国交省は22年4月に今後の技術政策の方針を示す「第5期国土交通省技術基本計画」を策定しました。技術の研究開発は長期的な視点が効果的であるため、20-30年先を想定し、学生や大学の先生の意見を聞きながら将来をイメージしたのが特徴です。

この中で完成検査の遠隔・自動化、巨大3Dプリンタによる設計・施工の合理化、建設現場の完全無人化、AIによる工程・安全のコントロール、遠隔のロボット操作などをイメージし、イノベーションを推進します。こうした将来ビジョンの達成には、現在を起点に未来を予測する「フォアキャスティング」と、未来の目標を起点にそこから逆算して解決策を考える「バックキャスティング」の思考法が有効です。この両方の思考法を相互作用させて施策を進める必要があるでしょう。

米国のケネディ大統領は人類初の有人宇宙飛行計画となるアポロ計画を約10年で進めました。国交省も宇宙建設革新プロジェクトなど難易度の高い取り組みを進めています。バックキャスティングの思考で高い目標を目指すと同時に、フォアキャスティングで全体の底上げを図りながら、新しい技術に挑戦し、生産性向上につなげたいと思います。