![第8回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2026) 出展資料請求 [無料] 会期 2026年 6月 17日(水)・ 18日(木)・ 19日(金)・ 20日(土) 会場 幕張メッセ](../../common/images/logo_cspi_8th.png)
建設現場の人手不足が加速する中、施工の品質確保や生産性向上の重要性がますます高まっている。課題解決に向け、AIやBIMを活用したデジタル技術、施工ロボットなどの開発が進められ、建設現場が大きく変わろうとしている。「これからの建設DXはデジタライゼーションと働き場所の変革を両輪で回すことが重要」と語る志手一哉芝浦工業大学建築学部建築学科教授に、建設DXの浸透による建設生産システムの今後の方向性を聞いた。
大手ゼネコンには目立った課題は見えないものの、強いて言えば品質問題が懸念されます。背景には技術者や技能者の高齢化、情報を伝えにくい外国人技能者の増加などがあります。ゼネコンが手掛ける大規模現場は人数が多く高所など危険な作業も増えるため、安全設備でしっかり対策することが重要です。
また、気象庁は4月に最高気温40度以上になる日を「酷暑日」と命名し、注意を呼びかけています。夏は酷暑日が続くため、高齢者の健康を守るのが難しくなります。作業所は昼の2時間休憩や夏期に夏休みを導入するなど、ダイナミックな対策を取らないと健康を守るのが難しいかもしれません。台風など自然災害も増え、事故対策もとらなければなりません。
施工品質の維持には知識や経験の伝承が不可欠です。昔は余裕があり、仕事は体で覚えるもので失敗も経験を積む授業料と受け止めてもらえましたが、今は失敗が許されにくくなりました。集合研修をしっかり行い、生成AIなどで事前に課題を調べてミスをするなという時代です。現場では社員だけでなく派遣社員なども仕事するため、品質をどう担保するかを考える必要があるでしょう。
さまざまなDXツールがあり、検査を効率化するツールも増えましたが、根本は品質問題を起こさないことが重要です。チェックよりも問題を起こさないためにどうDXツールを活用するのかを考えなければいけません。
解決策の一つが技術者の〝暗黙知〟の活用です。暗黙知の形式知化は難しいと言われますが大部分はデジタル技術で実現できると思います。ただ多くの手間と費用がかかるのが課題です。データも膨大になるためテキスト化してもそれを読むのも大変です。そのためAIを活用し、問題を未然に防ぐためのプログラムを組んで、技術やノウハウの伝承に活用するべきだと思います。
現場のオフサイト化もポイントです。作業を代替する施工ロボットの活用事例が増えましたが、現場はそもそもロボットが働きにくい場所です。どうすれば効率化できるかというと、事前に工場で部材を組み立て、現場ではロボットがそのユニットを天井や壁に取り付けるだけにします。工場で部材の組み立てにロボットを使って自動化することで多品種少量生産を実現し、現場のロボットの作業は単純化します。現場で働く技能者もロボットを動かすエンジニアのような仕事に変わるでしょう。1人で何台もロボットを動かせば劇的に仕事が効率化します。
工場であれば酷暑日も関係なく、パートタイム勤務などさまざまな働き方ができるため、ワークライフバランスにつながります。現場で働く人を減らし工場などのオフサイトで働く人を増やすべきです。
例えば天井ユニットには軽量鉄骨や石膏ボード、配管などさまざまな部材を取り付けますが、多くの職種の技能者が部材をアセンブルする際、手順や寸法に手違いが生じて手間や手戻りが生じることがあります。そうした問題を防ぐには、事前にBIMでバーチャル竣工することが有効です。正しい手順で組み立てた3次元データをユニット単位で分割して部材を製作し、アセンブル工場で天井をまるごと組み立て、現場のロボットで取り付ければ大きな生産性向上が実現します。設置しやすく組み立てやすいユニットの設計に技能者のノウハウが活かされると思います。
地方の公共事業は、不調・不落、計画変更、延期や中止の問題に直面しています。工事費が上がりすぎて設計を見直す案件が頻発し、必要な工事の進捗に影響が出ています。自治体の技術者も大手ゼネコンなどが給料を上げているため採用が減り、人を増やせません。工事を取り巻く環境が悪化しているほか災害対応も課題です。地域建設業を支援しなければ社会インフラの維持が難しくなるほど厳しい状況を迎えています。
こうした課題を克服する上で地域建設業もBIMなど新技術の活用が重要です。大手ゼネコンの案件に比べ、地方の公民館など小規模プロジェクトの方がBIMのメリットを感じやすいからです。自分で施工図を作ることでコスト感覚をつかめるほか、図面を一カ所修正すれば平立断の図面全てが自動修正されます。面積や数量も自動計算するため、BIMに切り替えたらCADに戻るのは難しいでしょう。
一方、地方のユーザーから「半端に取り組んだら効果はあがらない」という声もあり、実務の活用法やテクニックを学習するテキストや機会が必要です。日本建築士事務所協会連合会はポータルサイト「BIM GATE」を開設し、活用例や講習動画を発信していますので、分かりやすい解説が増えることを期待しています。
最も重要なことは、設計者や施工者が自らBIMを使うことです。現在は図面作成をCADオペや生産設計事務所に外注することが多いと思いますが、BIMは自分でやらないと効率があがりません。BIMはさまざまなデータを活用してチーム全体の業務を効率化しますが、効率化する知識は経験に依存するため、直接扱わないと良い発想が生まれません。
なぜかというと、いまやAIがプログラムやアプリを自動生成する時代となり、AIを活用すればBIMからほしいデータを自動で抽出するアプリをつくれるため、自分でデータの活用法を考えることが重要なのです。そのため、BIMだけでなくAIやMicrosoft Officeなどをスキルセットで身につける人材育成が重要です。スキルセットは社長、現場所長、現場職員、事務担当、技能者など役職や職能ごとに設定し、それぞれが求められたスキルを身につけるよう、組織としてボトムアップする努力が必要です。
従来の現場監督のコア業務は施工図の作成であり、それに相当するのがBIMデータを作ることです。この30年で施工図の外注化が進みましたが、それが施工管理職の成長を阻害する側面があります。自分で図面を描くことは現場をどう効率化するかを考えることにつながります。BIMは施工図に変わる仕事の根幹であり、技能者への正しい指示出しや、数量を出すほか、必要なアプリを自分でつくってさらなる有効活用が可能です。
BIMは部材の製作や組み立てのオフサイト化、現場のロボット活用などにつながります。あらゆる現場でこの建設DXを実現するには、職種や職能ごとにスキルセットを構築する必要があります。
新築だけでなく既存ストックの有効活用も課題です。それを推進する上で既存建物のデジタル化が注目されています。新築は設計や施工の効率化のためにBIMを導入しますが、既存建物をデジタル化するのは大変です。そのため、建物の各フロアを3次元計測し、統合した点群モデルを壁や柱、床、設備などの要素にセグメンテーションして部材に名前をつけたものを「点群BIM」として研究しています。
例えば設備機器ごとに記号や名前を自動でラベリングし、機器台帳とつなぎます。また、各部屋に照度とCO2センサー、ドアに人感センサーをつければ、建物内のどこに人がいるのかリアルタイムに分かるため、デジタルツインとして建物を管理できます。点群はデータが重いため、ビルメンテナンスに直接影響しない壁や床の密度を落とすことで9分の1程度にファイルサイズを削減できました。
ほかにも部屋の壁のエアコンモニターにカメラを設置し、ON/OFFなどをAIで読み取れば、1日の稼働状況を統計し、消費電力の傾向などを前日、先月、前年などと簡単に比較できます。こうした機能がストックの有効活用の一助になることを期待しています。
最新技術が集まる展示を通じ、来場者が現場の将来を展望できる場になることを期待しています。特に海外製品は日本にはない発想で生まれたものが数多くあります。今後はデータをつくるだけでなく管理やセキュリティーも重要です。そうした幅広い製品に出会う機会になるでしょう。
土曜日を含む4日間開催になり、平日に現場を離れられない人が来場できるのも素晴らしいことです。昨年始めた土曜日の一般観覧日では、多くの子どもが多様な建機にふれあったと聞きました。今回も未来の建設業を担う多くの子どもたちに参加してほしいと思います。
これからの建設DXはデジタライゼーションと働き場所の変革の両輪を回していくことが重要です。ぜひ日本の建設業界に取り組んでほしいと思いますし、それを実現する技術やシステムの開発が進むことを期待しています。
