![第8回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2026) 出展資料請求 [無料] 会期 2026年 6月 17日(水)・ 18日(木)・ 19日(金)・ 20日(土) 会場 幕張メッセ](../../common/images/logo_cspi_8th.png)
日本版GPSとしても知られる準天頂衛星システム「みちびき」。米国GPSなど各国のGNSS(全球測位衛星システム)の測位精度が5~10メートルであるのに対し、世界に先駆け〝センチメートル級〟の高精度な測位サービスを実現している。ICT活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)により省人化や生産性向上を目指す建設業界からの期待も大きい。みちびきが建設業にもたらすメリットについて、内閣府宇宙開発戦略推進事務局参事官準天頂衛星システム戦略室長の三上建治氏に聞いた。
GNSSは人工衛星からの測位信号を受信し地上の位置や時刻を特定するシステムです。米国のGPSが有名ですが、日本の準天頂衛星システム「みちびき」は、日本や東アジア大洋州上空をカバーする地域版のGNSSです。2018年から4機体制で実用サービスを開始し、現在は5機で運用されています。
一般に測位衛星は地球を周回しているため、高いビルや樹木に信号が遮られ、位置情報を安定して得られないことがあります。みちびきでは、静止軌道を斜めに傾けた準天頂軌道に衛星を置くことにより、衛星は日本上空におよそ8時間滞在するように見えます。同軌道に3機を置くことで日本上空を24時間カバーできることが、準天頂衛星の名前の由来となっています。また、天頂方向から信号があると測位精度が上がるメリットもあります。
みちびきは、GPSなど他国の衛星測位システムと互換性を持って運用していますが、今後も他国のシステムを使えるとは限りません。他国のシステムに頼ることなく、みちびき単独で持続的に測位を可能とするため、将来、準天頂軌道上に4機、赤道上空の静止軌道上に3機を配置する7機体制の構築を政府目標として進めてきました。
しかし25年12月、H3ロケット8号機の打ち上げが失敗、みちびき5号機を喪失し、25年度内の7機体制構築は達成できませんでした。現在、政府としては、種子島に残るみちびき7号機を速やかに打ち上げ、当面6機としての運用開始を目指しています。
さらにみちびきの将来的な目標として、11機体制とすることが宇宙基本計画に掲げられています。例えばスマート農業、金融業など、衛星測位システムのサービスの停止を一瞬たりとも望まれない分野・産業があるからです。政府では、準天頂衛星システムの開発と打ち上げを継続していく予定であり、今後も信頼性ある測位サービスの提供を行っていきますので、ご安心ください。
みちびきは、専用受信機を活用してGPSを超える高精度な測位が可能です。例えば、センチメータ級測位補強サービス「CLAS(シーラス)」では、6センチ(仕様値)の測位精度を実現しています(国内のみ)。
また、CLASよりも少し精度は落ちますがより広い範囲をカバーできる、サブメータ級測位補強サービス「SLAS(エスラス)」も提供しています。SLASでは1メートル精度でありながら、その受信機は小型化され、既にゴルフウオッチなどに組み込まれて市販もされています。
みちびきの高精度測位サービスが開始された18年頃は、受信機は100万円を超えるものでした。以後、普及に連れて価格低下は進み、現在では10万円を切り、また大きさも小型化し、入手・活用しやすくなりました。建設業界で進められるi-Constructionでも、活用が進むことを期待しています。
また、海外でも利用可能な補強サービス「MADOCA-PPP(マドカPPP)」については、みちびきの信号を受信可能なエリア(東アジア、東南アジア、豪州、太平洋諸国)でも十センチメートル程度の高精度測位サービスを提供しています。GPSで実現できない高精度測位サービスをみちびきが提供することで、日本の国際貢献(ITインフラの提供)も果たしています。
また、みちびきからは、災害・危機管理通報サービスも提供しています。SLAS信号の隙間を活用して、気象庁の緊急地震速報や津波情報など災害や避難に関するメッセージを宇宙経由で伝送することができます。地上通信が届かないケースや地上通信システムが災害で破損したエリアでも使うことができるため、災害時の通信バックアップとなることが期待されます。
さらに、みちびきの信号認証サービス「QZNMA」も知っていただきたいサービスです。最近は衛星測位の分野でも、強力な妨害電波を浴びせるジャミングや偽の測位信号で位置を欺瞞するスプーフィングといった電波攻撃が世界でみられています。QZNMAでは、受信機で得た測位信号が正しいものであるかを別の信号で電子認証する仕組みの実現によりスプーフィングによる「なりすまし」攻撃を防ぐことが可能です。将来、日本の建設現場でも、このような攻撃が現れるかもしれず、対策を知っておくことに損はありません。
従来から、土木建設の現場では高精度な測位といえばRTK(リアルタイムキネマティック)が活用されていました。RTKでは、基準局が取得した観測値を移動局に伝送し補正を行う相対式の測位です。ミリメートルから数センチといった高精度が得られます。一方で、みちびきのCLASでは1センチ以下の精度は出せませんが受信機1台あれば使える単独測位です。6センチ程度(仕様値であり、最近の実効値では3センチ)の精度を許容する現場であれば、RTKで必要となる基準局や通信機器が不要になり設備設置の手間や通信料などコスト減が可能です。また、基準局を設置できない海上や山中の現場でも、単独測位のみちびきであれば、高精度な測位を得ることができます。
みちびきの高精度測位サービスが利用されている現場をいくつか紹介します。
例えば除雪作業があります。積雪の多い地域では毎夜・毎朝に稼働が求められる過酷な現場です。オペレータ不足も深刻です。国土交通省北海道開発局ではi-SnowとしてCLASと3Dマップデータを活用しロータリ除雪車の自動化技術を展開しています。数メートルの雪が積もるエリアでは、どこに道路や白線があるかは分かりません。そのため、事前に取得した道路の3DマップデータとCLASを連携し、除雪車の位置や方向を把握し除雪作業を迅速かつ省人化で行えるシステムを開発されています。
また、国土調査の地籍調査でも、今後、CLASによる測位が効果を発揮する見込みです。地籍調査ではRTKほどの精度は求められないため、現在、CLASを用いることができるよう環境整備を進めています。今後、CLASを用いた地籍調査の事例を増やし、当局による新たな基準やガイドラインへの反映を促すことなど進めてまいります。
災害時においては、例えば、津波や水害で押し流された直後の現場では機材が必要となるRTKは使えないでしょう。しかし、泥の中からでも復旧に向けた工事は始める必要があります。そのような際、単独測位のみちびきの測位サービスによれば、およそ正確な測位は可能であり、応急手当として役立つものになると考えます。
政府では現在、「みちびき7号機の打ち上げ」を第一に考えています。これにより6機での運用実現を目指しています。1機を喪失したとはいえ、24年までは4機体制でしたので2機追加され受信状況などの安定性は大幅な向上といえます。もう一つは、国内の衛星測位ユーザーへアプローチを深め、新たなみちびきユーザーの開拓を行うことです。みちびき6機の運用によって、より幅広く、国内のインフラ整備やスマート農業などの実現場に使っていただける段階に移るといえます。
CSPIには多くの測量・建設関係者が来場されます。みちびきブースにお立ち寄りいただいて、システムやサービスの魅力・可能性を知っていただきたく思います。
